今日は、私を含め多くの30代〜40代ビジネスパーソンが直面し、かつ、できるだけ早めに手を打つべき悩みについて。
「年収がここ数年ずっと変わらない」「30代前半までは転職含め年収も簡単に上がったのに、最近は年収が停滞し始めた」
こんな問題にキャリアの途中で直面する方は多いのではないかと想定しています。
本日はこの「年収頭打ちへの処方箋」を私なりに書いてみようと思います。
年収頭打ちの典型的なサイン
まず何をもって「年収頭打ちなのか」簡単なチェックリストを用意したので確認してみてください。
チェック項目
- 3年以上昇給幅が20%以下
- ここ1年で市場価値が向上したといえる明確な理由がない
- 役員〜部長クラスへの接点がない
- 異動の打診やストレッチアサインがない
- 転職しようとしたが希望する条件での転職が3ヶ月以上決まらない
私の場合は、20代でGAFAの海外オフィス勤務を経験し、外資系戦略コンサルファームなども経て、「キャリアは万全だな」と30代中盤までは考えていました。
しかし、子どもも2人生まれ、「そろそろ家でも買おうかな」と思っていた30代後半にこの問題にぶち当たりました。
「転職活動したら引く手あまただろうな」
そんなふうに自分を高く見積もっていました。
しかし、いざ転職活動をはじめてみると、年収アップはおろか、現年収維持で「就きたい」と思える仕事もなかなか見つからないという始末。
その時に私が考えたことを踏まえて、年収が頭打ちになる本質的な理由と、そこを突破する現実的な処方箋を整理したいと思います。
なお、私は技術者ではないため、あくまでもビジネスサイドの職種向けの考察になります。
1. 年収が頭打ちになる典型的な理由(30代・40代がまず理解すべき構造)
よく挙げられるのは次の2つです。
年収頭打ちの要因(一般論)
- 専門性の欠如(ジェネラリスト問題)
- 昇進できない(ポスト不足問題)
多くの人が「専門性の不足」「人材価値が高いスキルは何か?」を気にして勉強に走ったり、ジョブチェンジを試みようとするケースが多いのではないかと思います。
営業からキャリアをスタートした私もその典型で、プロダクトマネジメントやマーケティング、ファイナンス、戦略コンサルティングなど、「幅を広げること」に30代前半から注力してきました。
しかし今は、実は年収の壁を決めているのは ②昇進できるか=上位ポストの獲得 が圧倒的に重要で、チャンスが来たら最優先で取りに行くべきだ、という結論に至っています。
2. 年収2,000万円は「専門職スキル不要」で達成できる理由
そもそも、求めている年収によってもアプローチは異なります。一度ここを整理します。
まず、年収2,000万円程度が目標の方について。
実は年収1,800〜2,000万円までは、いわゆる“専門職”でなくとも、また“管理職”でなくとも達成可能です。
外資テックで言えば L5クラスのIC(個人貢献者) レベル。
企業によってはタイトル上はマネージャーになることもありますが、必ずしもピープルマネジメントの要求度合いが高いわけではないのがこのレベルです。
難易度が低めのL5のハード要件として、例えば外資テック企業のSaaSや広告営業系のポジションでいえば:
- 関連業務の経験5〜7年(必ずしもこの年数が必須ということも少なくない)
- 簡単なビジネス英語
といったところが満たせれば、たどり着ける求人はかなり多くあります。
ちなみに、私が30歳前半に米国NASDAQ上場のSaaS企業からAccount Executiveとしてオファーをもらった際は、2,300万円(ベース1,400万円 + セールスインセンティブ900万円) といったパッケージでした。
もちろん営業成績次第というところもありますが、「年収2,000万円の可能性があるICポジション」です。
3. 年収2,500万円以上が難しいのはなぜ?(外資L6/L7の構造)
一方で、年収2,500〜3,000万円以上になると状況が一変します。
外資系テック企業のジョブレベルでいうと、L6〜L7(マネージャー〜ディレクター)。
コンサルティングファームでは、トップTier戦略ファームのプロジェクトリーダー以上。
いずれもICとしてのポジションは一般的ではなくなります。
よくある誤解は、
「専門性を磨けば上に行ける」
という考え方です。
しかしビジネス職の“専門性”は、実は技術職ほどの非代替性はなく、
例えばマーケターやPMの専門領域も、技術職ほど深くはありません。
少し乱暴にいうと、
「そこそこしっかりインプットしていて、ある程度地頭と基礎体力があるビジネスパーソンであればこなせてしまう仕事」
である、というのが実態です。
もちろん実務経験ゼロですぐにパフォーマンスを出せるわけではありませんが、数回プロジェクトの全体像を経験してしまえば、その後の仕事の成果として“決定的な差”がつくほど難易度の高い仕事ではない。この点は、実際にマーケティングやプロダクトマネジメントをしている人ほど同意されるかと思います。
したがって、年収を決めるものは 「専門性」よりも「昇進(=ポストを取れるかどうか)」 が大きなウェイトを占めることになります。
結論:年収頭打ちは「専門性不足」ではなく、「昇進(ポスト不足)」が主因。突破にはL6以上の椅子を取りにいく戦略が必要。
4. 外資テックでL6になれる人数のフェルミ推定(日本の“椅子”の数)
では、「L6以上のポストは日本にいくつあるのか?」
以下は 最小限の前提で“構造”だけ把握するためのフェルミ推定 です。
前提:外資テックの日本社員はざっくり6万人
外資テック主要30社(GAFA+外資SaaS+外資クラウド+外資半導体など)を合算すると、
公開情報や知人の話を元に試算すると、総数は5〜6.5万人規模 になるため、ここでは 6万人 と置きます。
ステップ①:「マネージャー比率」から逆算する
ほぼどの外資も、
- “1マネージャー=5〜7名のICを管理”
- マネージャーとICの比率は 約1:6前後に収斂
という構造で組織を組んでいます。
したがって、
6万人 ÷ 7 ≒ 8,500人 → 日本に存在し得る「管理職の理論上限値」
となります。
ただし実際には、
- IC専門職比率が高いSaaS
- 日本はHQより管理職が少ない
といった“現実補正”を入れると、
マネージャー実数:7,000〜9,000人程度
が妥当なラインかと思われます。さらに、2022年後半から始まった大規模なレイオフ・採用枠の縮小傾向は、AIの浸透に従い加速しており、今後は縮小が進む可能性高い。
ステップ②:管理職の「階層構造」を当てはめる
外資テックはどこもピラミッド構造です。
多くの企業で「L6:M1」「L7:M2」「L8:ディレクター」「L9〜:VP」という構造のため、管理職の内訳は経験則的に次の比率に近づきます。
(L5がM1扱いのケースも一般的ですが、前述の通り実態としてはL5にもICが多い)
- L5以下(IC):約85%
- L6:管理職の60〜70%
- L7以上:管理職の30〜40%
これを人数に落とすと:
- L5以下:約52,000人(全体の約87%)
- L6:約5,600人(全体の約9%)
- L7以上:約2,400人(全体の約4%)
結論:年収2,500万円以上は8,000席(≒全体の13%)しか存在しない
L6後半〜L7以上が “年収2,500万円ゾーン” であることを踏まえると、
外資テック6万人のうち、2,500万円以上を取れる椅子は 約8,000席(≒全体の13%) しかない。
ということになります。
5. コンサル・IB・PEで年収2,500万円に到達するには?
年収2,500〜3,000万円以上を狙える“上位ポスト”は、おおよそ次の4つに集約されます。
どれも構造的に 上位5〜10%しか席がない ことがわかります。
■ コンサル(戦略・総合)
前提:日本の戦略系+総合系のコンサルタント人数は 4万〜4.5万人。
階層の比率をあてはめると:
- PL以上(=高給層):全体の 5〜7%
- Big4/ACNの高給Manager以上を加えても
→ 年収2,500万円超は700〜1,200人
■ 外資系投資銀行(IB)
主要10〜12社 × 150〜300名(フロント)= 2,000〜3,000人規模
- Director以上:1社あたり 5〜15人
- VP後半まで含めても
→ 合計300〜500人
■ プライベートエクイティ(PE)
PEは“少人数精鋭”で構成されます。
- 日本に 70〜100ファンド
- Principal〜Partnerは各社 3〜5人
→ 合計 500〜800人
■ 事業会社役員(日本拠点)
外資・日系を含めて、外部採用の役員ポジションを持つ企業は 1,000〜1,500社。
- 年収2,500万円級の幹部枠は各社 5〜10席
→ 合計 5,000〜10,000人
▼ まとめ:年収2,500万円以上の「椅子」の数
| 業界 | 年収2,500万円以上の席数 |
|---|---|
| 外資テック | 約8,000席 |
| コンサル | 700〜1,200席 |
| IB | 300〜500席 |
| PE | 500〜800席 |
| 事業会社役員 | 5,000〜10,000席 |
合計:約14,500〜20,500席
VCや商社(まだまだ終身雇用世代が大多数)など、ここに含めていない業態もありますが、算入しても大きく桁が変わることはありません。
日本全体で年収2,500万円以上を安定的に得られる“椅子”は、わずか1.5万〜2万席しかない。
▼ 35〜50代のエリート人口は何人いる?競争相手は10万〜20万人
さらに、日本のエリートといわれる人の数を推定してみます。
ステップ1:対象となる大学の“1学年あたり”の供給母体(35〜50代向け)
外資・高難度キャリアにつながる大学群に限定して算出します。
- 東大:3,000
- 京大:3,000
- 一橋・東工大:1,500
- 旧帝(外資志向の強い上位学部に絞り 約1万人に圧縮)
- 早稲田・慶應(外資直結の上位学部のみで 5,000〜6,000 程度)
→ 合計:1学年あたり 約13,000〜15,000人
ステップ2:35〜50代(約15〜20学年)の“潜在供給母体”
35〜50代を 15〜20学年 とすると、
13,000〜15,000人 × 15〜20年 = 約19.5万〜30万人
(=外資・専門職キャリアの“潜在供給母体”となる高学歴層)
ここからさらに、
- 官公庁に残る層
- 弁護士・会計士等の士業
- 日系大手で長期キャリアを希望する層
を除き、
実際に外資/専門職に挑戦するのは 10〜15% 程度 と見なします。
19.5万〜30万人 × 10〜15% = 約2.0万〜4.5万人
ステップ3:中途流入とキャリア累積効果を加味(35〜50代向け)
コンサル・外資テック・PE などの「高年収キャリア」は、
新卒よりも中途採用のほうが圧倒的に多い という特徴があります。
- コンサル:年間 1,500〜2,000人
- 外資テック:1,500〜3,000人
- IB・PE・VC:500〜800人
- 商社・官庁・大手メーカー → 外資へのキャリアチェンジ:500〜700人
合計すると、
年間 約4,000〜6,500人が“外資・専門職”に新規参入
これが 20年間(35〜50代の職歴期間)で累積 すると:
4,000〜6,500人 × 20年 = 約8万〜13万人
しかし、外資キャリアは Up or Out で離脱率が高い ため、
残存するのは 30〜40% 程度。
8万〜13万人 × 30〜40% = 約2.4万〜5.2万人
これが、「35〜50代で、いま現在外資/専門職キャリアに乗っている層」の人数です。
まとめると、外資・専門職キャリアに継続的に乗っている層は:
- 新卒・初期キャリアで外資に入った層:約2〜4.5万人
- 中途流入を経て残っている層:約2.4〜5.2万人
合わせて 10万人弱。
これに加えて、
- 商社・メガバンク・日系大手の高収入総合職
- インフラ大手・電機メーカーの基幹職(年収800〜1,200万)
- 官庁 → 民間のハイスキル層
- MBA帰国組
- 海外大学出身者(35〜50代に多い)
などの “外資ではないが高難度キャリア圏に属する層” まで含めると、
35〜50代の“エリート層”は 合計 約18〜20万人
多少の誤差はあるとしても、ポイントはただ1つ。
これは完全に「椅子取りゲーム」だ、ということです。
6. 年収頭打ちを突破するためのキャリア戦略:L6を取りにいく方法
専門性の勉強に逃げるのではなく、
いかにしてマネージャーポストに手をかけるか がすべてを決めます。
なぜならば、これまで見た通り、L6の椅子の数に対して、そこを目指している人の数は圧倒的に多いからです。
7. L6の取り方:現実的なルート
そしてL6の椅子を獲得するにあたり、「確率論」だけで見た場合に目指すべきロールは2つです。
先ほどの数値を思い出してください。
日本におけるL6以上のポジションの数
- 外資系テック企業:約8,000人
- コンサル:700〜1,200人
- IB:300〜500人
- PE:500〜800人
- 事業会社役員:5,000〜10,000人
この中で、外資系テック企業 と 事業会社役員 の2つです。
そもそもの椅子の数が、他のロールと比べて1桁多いことに気づいていただけると思います。
もちろん「英語がどうしても苦手」など個人的な特性も重要ですが、
まずは上記の数値感を頭においた上で、自分のキャリア戦略を設計することが大事です。
① 外資テックの“成長フェーズ”に乗る
私の経験上、おすすめのロールの1つは「外資テックの“成長フェーズ”に乗る」ことです。
成熟した日本法人ではポジションが埋まっていることが多い。
一方で、立ち上げ〜成長初期の外資テックは、本社ともパイプを築きやすく、
また、初期メンバーとして年齢に関係なく昇格スピードが速い傾向にあります。
唯一の注意点は、「そもそも日本でうまくいかない事業」を掴んでしまうリスク。
それを避けるために、カントリーマネージャーなどを狙う方以外は、
「初期の顧客はしっかりいて、事業もうまくいき始めた。これから営業人員を増やそうとしている」
というタイミングを狙うことです。
② コンサル → 事業会社幹部ルート
事業会社は、内部で幹部候補が不足しているケースが多く、
戦略コンサル出身者は「最短で役員候補」として採用されやすい です。
逆に、日系企業にいきなりミドルクラスで入社するのは、
給与も昇格も非効率 になりやすい。
そもそも幹部候補として見られないリスクさえあります。
コンサルファーム内でのキャリアアップ自体を狙わない前提でも、
「戦略コンサルタントのブランドを一度つけておく」
ことは、後の転職市場で非常に有利に働きます。
7. 年収頭打ちを突破する「唯一の方法」
結論はシンプルです。
原因①:専門性は代替可能であり、年収には直結しにくい
→ 対策①:専門性偏重をやめ、L6以上のポスト獲得を前提にキャリア設計を行う
マーケティングやプロダクトマネジメントなど、いわゆる“専門性が必要”とされる職種であっても、
実態としてはフレームワークや実務経験で代替されやすい部分が多く、
専門性そのものが年収の上昇に直結するケースは限定的です。
そのため、年収2,500〜3,000万円レンジを考えた際に必要なのは、
専門性ではなく、L6以上のマネジメントポストをいかに確保するか という視点になります。
原因②:高年収ポストの“絶対数”がそもそも非常に少ない
→ 対策②:椅子の多い業界に戦略的に移る(外資テック・事業会社幹部が最有力)
日本にある「年収2,500万円以上の椅子」は、
外資テック・コンサル・IB・PE・事業会社幹部をすべて合算しても 1.5万〜2万席程度 です。
一方で、30〜50代のいわゆる上位人材は累計18万人以上存在します。
つまり、構造的に考えても「誰もがL6以上に到達できる」わけではなく、
椅子の絶対数が足りていない というのが実態です。
そのため、キャリア戦略としては、
椅子の多い産業(外資テック・事業会社幹部採用)に移動する方が、
合理的かつ成功確率が高い といえます。
ポイント
- 2,000万円までは専門性不要
適切な転職で到達できるレンジです。 - 2,500〜3,000万円以上は完全に“椅子取りゲーム”
専門性の深さではなく、ポスト獲得の戦略がすべてです。 - 椅子は日本で1.5万〜2万席しかない
- 狙うべきは“椅子が多い業界”
とくに「外資テックのL6以上」「事業会社の幹部ポスト」は椅子の絶対量が多く、現実的に狙いやすいポジションです。
だからこそ、戦略的にポストを取りに行く 必要があります。
年収を上げるうえで、専門性を深めること自体は価値があります。
しかし、“専門性を深めれば自然と年収が上がる” という考え方は、
データで見ると必ずしも正しくありません。
私は30代後半で年収頭打ちにぶつかり、
自信もキャリア観も一度崩れました。
でもそこからはっきり分かったのは、
キャリアは「努力」ではなく「戦う場所の選び方」で決まる。
この記事が、あなたが次のステージに向かうための
“戦略の起点”になれば嬉しいです。
あなたが次のステージに進むことを、本気で応援しています。
どこかでお会いしましょう。